シュークリームと雨だれ
推しの推しどころを書き連ねる、その一（推しの数だけ続く予定）。緑のあの人篇。かつてバレエを習っていた私の、推しの好きな身体表現について。
introduction
物心がついた頃には、定期的にバレエレッスンに通っていた。周りの子よりも体は硬いし、集団レッスンにもまるでなじめないし、ついぞトウシューズに足を通すことなく、引っ越しを機にバレエはやめた。ただ、自由な動きで踊っていい時間だけはちょっと好きだった。
身体にも頭の中にも、当時習ったことはもうほとんど残ってはいないけど、今でも覚えている指導のひとつにこんなものがある。
「常に手先・指先を意識しなさい。中指の先から水滴が落ちる様子をイメージしなさい」
ダンスに落ちる
この人こんなに気持ちよく踊る人だったっけ。
彼をそんな風に初めて意識したのは、2016年12月に投稿された「ロストワンの号哭」を見たときだった。
当時、とっくにむすめん。のファンではあったものの、この人の印象といえば「シュークリーム食べてる人」 (1st シングルMV参照）。その後もいろいろ見せ場はあったのにもかかわらず、ぱっと思い浮かべるのはなぜかいつもあのシーンだった。*1
ところがこの動画が、このダンスが、彼の印象を塗り替えた。この人こんなに気持ちよく踊る人だったっけ。それまで大して注目していないメンバーだったのが、なんだか急に視界に入ってきたような感じさえした。そのくらいこのダンスは、衝撃的にかっこよくて気持ちよかった。
ざらついていそうな床の上を、裸足でぶれることなく跳躍する肢体。体重の存在をきちんと感じる着地。腕の動きにぶれがないから、空中で関節を固定させているかのように見える。ズボンの裾は長めだが、足がもつれることは決してない。パーカーのひもや学ランの裾が身体に遅れて動くたび、俊敏さが際立つ。重たい前髪が空を切るのも、そんな印象をいっそう強くする。タメとオンテンポの切り替えが絶妙で、柔と剛を兼ね備えるとはこういうことをいうのかと思う。……こんなことが頭の中を駆けめぐる三分半だった。
それからというもの、時折投稿される動画では、自然と彼のダンスに目がいくようになった。気づけば私はすっかり、この人の身体表現に魅了されていた。
水滴が落ちる
アイドル好きにも色々なタイプがあるけれど、私は特にパフォーマンスの質に重きを置くタイプだ。*2ダンスについて言えば、先の「中指の先から水が滴るように」というのは意識的にしろ無意識にしろ、アイドルのダンスを見る際に重視するポイントだ。これができていなくちゃ見ていてつまらない。
そして今、この点において、こんなに痺れるような気持ちよさでダンスを見せてくれる人は、彼をおいて他にいないと思う。
それが最もよくわかる映像のひとつがMuddy WaterのMV（0:43）。ほら、滴ってる。
【MeseMoa.】Muddy Water【Dance shot Ver.】
手首からじゃなくて、もっと体幹寄り、肩辺りから中指の先に流れていくのが見える。それは筋肉の動きであり、水の流れでもある。単に手首だけをぴっと動かすのでは、こうはならないのだ。
このMVを見たときに感じた幸福といったら。理想とする身体表現を、他ならぬ推しがやっているのだから。*3
偏愛動画たち
……といったような経緯で彼を推し始めた私（「推しのダンスが好き」というよりも「推しの身体表現が好き」と言いたがるタイプのオタク）の、厳選・偏愛動画コレクションを。
色物と思うなかれ。ご本人がスカートはいて踊ってるという大変珍しいシチュエーションがヴァリューアブル。膝下の動きがこんなによく見えるのはミニスカートならではである。
もう何度見たかわからない。穏やかに微笑んだり破顔したり、ダンスだけではなくそんな表情も含めた表現が楽しめる動画。二人で視線を合わせるのもグラスを傾けるのも、全てが幸せに満ちている。ご本人がブログで撮影時のことを綴っていて、さぞかし楽しい撮影だったのだろうなあと思いながら読んだ。
音楽にも動きにも激しいところはなく、淡々と言葉が紡がれる。派手な振付はないが、そのぶん手先の繊細な表現にじっくり浸ろう。壁と天井に伸びる影も、実物の二人（の動き）を引き立てている。
【SLH×MeseMoa.】ダーリン 踊ってみた【K'suke】
【SLH×MeseMoa.×K'suke】ダーリン踊ってみた【MV】
とんでもなく豪華なコラボ作品。湿度が高くて温度が低い、そんな空間（であることにほとんど確信を持ちながら見ている）。定点ver. とMV ver.の二種類どちらも見るべし。前者では時間なり重力なりを操っているのかと見まごうばかりの動きが、後者では表情と手先のアップが堪能できる。マシュマロでも鋼でもなく、骨と肉を伴った人間の肉体だからこその動きや表現に見惚れてしまう。これは余談だが、2:45～「切って爽快 喰らって崩壊」辺りの振付はエッシャー の「出会い」を思い出す。
総括。ロストワン然り、ダーリン然り、この人はひんやりした曲調が大変に似合うのだが、楽しさを隠さずに笑顔で踊っている姿もまた、見ていて楽しくていっそう好きになってしまう。
彼と踊ってみた動画
最後に、ここまでの文章と映像で共感するものがあったあなたに向けて、2018年10月のLINE LIVEを紹介しておく。多くは語るまい。だが、もしもまだ見たことがなければ、ぜひに。
https://live.line.me/channels/2086993/broadcast/9724502
