「真逆の糸」における俳優・野崎弁当(前編)

真逆の糸で毎回地蔵になっちゃう茶推しが、「アイドル野崎弁当」に垣間見える「俳優野崎弁当」について偏愛気味に感想と解釈をつづる記事。前編はMVについて。

 

 MVでの表現~演じたら愛してくれた?


【MeseMoa.】真逆の糸 [Crossing Threads] 【6th single】

0:07~

まずド頭の仮面を剥ぐような振付に心奪われてしまって、しばらく先に進めないんだけど、息つく間もなくセンター二番煎じを皮切りに台詞パートがやってくる。

Shadow KissでもMuddy Waterでもなかった「台詞」の要素が!*1*2

「一糸乱れぬ仕草で」
「演じたら愛してくれた?」

直前の白服さんパートも然り、ここで台詞の直後にもうひとカットあることで、見る者に与える印象は格段に強くなる。問い終わってから、伏し目がちに光の方を向く。このカットの効果で、この一連が単なる曲の一部・導入部であるにとどまらない、曲全体を象徴するパートであることがわかるのだ。

0:30~

タイトルバックからの全員でのダンスシーン。うつろな表情と眼光との対比が、これから起こる物語の不穏さをいっそう引き立てる。0:36~の明らかに不穏な音の直前にこのカットが入る、物語を見せるにあたって、この効果は大きい。 

1:50~

「I need them.」の声の重なりの中で、物語のキーパーソンたる二番煎じに手を伸ばすや、口をきゅっと結んで向き直り、立ち去っていく。(他推し各位、ここの口元を見てほしい。いったん巻き戻して見てほしい。)

2:15~

間奏でのアップ。ほんの一秒足らずのカットではあるものの、苦しげな表情で光源を見やる、落涙する数歩手前みたいなその瞳の輝きに、何も感じない人間なんているはずがない。

ここで手を喉元に添えるのは、撮影サイドからそういうオーダーがあったのか、それともフリーで動いたのか、気になるところ。チェキ会期間中にご本人に聞けばよかった。*3

2:57~

これまでのアップとはうってかわって、手の仕草が急に乱暴になる。この仕草の変化が「あり得ない結末」を予感させる。(歌詞カードを通読してから見ると、いっそうこの印象が強くなる。)

3:40~

何かに苛まれるような表情で、光源の方向を向いて、そしてもう一度顔をそむける。2:15~と2:57~の手の演技が、ここにつながっている。

4:05~

「一糸纏わぬ心で」
「演じたら愛してくれた?」
冒頭で印象的だった台詞をここで今度は歌詞として持ってくる、曲のつくりが堪らない。

このパートから曲の(文字通り)お終いまでの1分ちょっと、これこそが俳優・野崎弁当をまざまざと見せつけられる時間であり、「一糸纏わぬ心で」から「触らないで」までの、歌割りのない間の表現が白眉なのである。
が、この部分、MVにはほとんど映っていない。なんてこった。ダンスショット(フォーメーション)とライブ映像(表情と動作)とを見比べることで、ようやく全貌と各部分とがわかるのだ。


【MeseMoa.】真逆の糸 [Crossing Threads] 【Dance Shot Ver.】

 


【MeseMoa. - 真逆の糸】MeseMoa.6thSingle発売記念フリーライブより

 

ライブでの表現~触らないで

と、ここまではMVに沿って「俳優ポイント」を列挙したが、いよいよ俳優力を見せつけられるライブでの野崎弁当さんについては、次の記事で述べたいと思う。(全部一気に書くの疲れちゃった……。)

書き上げたら、音楽ナタリーのインタビューもっかい読も。

MeseMoa.「真逆の糸」インタビュー|halyosy、ぶんけいと紡ぐダークな世界観 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

*1:MeseMoa.の楽曲をおおざっぱに分類するとき、SKやMW辺りの「物語を表現することに主軸の置かれた楽曲」が、いわば「劇団めせもあ。」とでも言うべき一群になろう。真逆の糸はきわめて明確にこれに属する曲である。

*2:対して、「普遍的な邦楽フォーマットやアイドルソングフォーマットに則った楽曲」と「MeseMoa.が歌うことで初めて意味を持つ(そのように制作された)楽曲」がある……というのが私見なのだが、この辺りはまた別記事でいつか。

*3:ところでそろそろMVのメイキング復活してくれたら嬉しいなあ。メイキングとかバクステとか、そういうの大好き。